【肺癌の画像診断】
1.存在診断
肺癌の診断において第一の目的は、胸部単純写真における「異常の検出と局在診断」にある。病気が何かという前に、まず見つけることが大事で「見逃してしまっては何にもならないということ」すなわち「存在診断」のできる能力がもっとも必要である。以下「存在診断」に必要な読影テクニックについて述べる。
(1)正常解剖の理解
正常を知らなければ何が異常なのかわからない。異常陰影を見つけるためには、まず正常X線解剖について理解し、正常像を読影できる能力を身に付ける。
(2)シルエットサイン
シルエットサインとは、X線の物理的透過性に基づく理論的読影法であり胸部正面像において病変の局在を診断するための重要なサインである(症例1)。存在診断において異常陰影を見落とさないために読影テクニックとして習熟する必要がある。
症例1 左横隔膜シルエットサイン陽性(肺癌)
2.質的診断
質的診断いわゆる「病名を当てる」には、多くの医学的知識や経験と患者の医原情報が必要であるが、肺癌の組織、進展様式および形態的な分類により鑑別することはある程度可能である(症例2)。
症例2 末梢型腺癌の進展増大を高分解能CT画像は明瞭に描出している。
【肺炎の画像診断】
(1)肺炎の治療における画像診断は、胸部単純写真のみというケースが非常に多い。これは、肺炎が患者個人の医原情報に基づき診断治療されるからであり、症状および理学所見により疑われる疾患は限られてくる。即ち、胸部単純写真に要求されることは、目的とする病巣が明瞭に描出されていれば良い。
しかし、目的とする病巣が胸部写真上描出されない、或いは予想した陰影パターンと異なる。悪性腫瘍の可能性がある。治療を開始したが効果がない。または確定診断はついているが治療方針決定のために活動性評価をしたい等の理由で胸部CT撮影が行われる。従って胸部CT画像に要求されることは、多種多様な診断目的に対して最適な画像を提供することであり(症例3)、そのためには、肺炎の診断および治療に対する理解が必要である。
症例3 高分解能CTの壁肥厚を伴う嚢胞像は病理組織そのものである。(肺好酸球性肉芽腫症)
(2)肺炎の画像は時期により実に多彩な表情を呈する(症例4)。現在の状態が、急性期、寛解期、慢性期の、いずれの状態なのかを常に認識し、「この検査で一体何が知りたいのか」と、いつも疑問を持つ心掛けが最も大切である。
症例4 入院精査中の胸部単純写真で陰影の移動が認められBOOPと診断。